第二十二回

  

  花篝賞

花篝賞

明の春    高野紀子      

 

淑気満つ衣桁に祖母の一つ紋

明の春座卓継ぎたす四世代

庖厨を子らにまかせて雑煮椀

そこばくの幸ををろがむ初社

エプロンを外し歌留多をよむ役目

賀状受く墨の香の立つ散らし書き

二日はやふだんの余白玄関に

初席や出てけ出てけとはね太鼓

江戸川の碧きしじまや寒日和

三つ星やときに躓く車止め

春浅しポプリの満つる玻璃の瓶

安房の香をのせて届きぬ春苺

おとうとが率先雛の飾りつけ

三従の道はいづこよ青き踏む

歳時記に掬ふ言の葉日永し

準賞

城のある町  竹内ようこ      

 

地図記号揃ふわが町春兆す

梅林のかなたに富士の裾濃かな

悲運なる武将の城や涅槃西風

北条の濠のふかさや飛花落下

海見ゆる城のある町楠若葉

梅雨曇外郎売の長ぜりふ

鯵青くだみ声高き競り場かな

城跡の石垣舐むるごと蜥蜴

駅裏の闇市めきぬソーダ水

​天守閣望む菩提寺墓洗ふ

優秀賞

大王崎灯台   川面凡中      

 

故地志摩の大王崎や風光る

灯台の螺旋階段冴え返る

腕太き海女の抱ふる浮き輪かな

大夕立九鬼水軍の砦跡

干し魚見張る浜辺の案山子かな

考連るる思ひや故地の秋の海 

灯台も星の一つや天の川

北紀行   中島典子      

 

舷側の波音高し星月夜

秋澄むやサハリン望む間宮像

カーナビで辿れぬ獄所茨の実

墓標なき鎖塚にも月今宵

国後の島影青く霧の中

もろこしの美瑛の丘に深呼吸 

​漁場なき熊彷徨へるルシャの浜

街角   野末一郎      

 

観世音三社祭の中に立ち

運動会ビルの谺の熱き声

青竹に道着干したる爽気かな

あたため酒稽古で受けし肘の疵

仲見世をヌーの移動か初詣

面取らば白頭に湯気寒稽古 

​熱燗や銚子を倒す負試合

​入選

ちちろ鳴く   八尋隆幸      

土筆摘むすぐに溢るる野球帽

直線に子猫の飛び込む膝の上

勿忘草無名戦士の詩に揺る

毎夕の祈りに交じりちちろ鳴く

手に余る買い出し袋雪催

稲育つ   小島美佐子     

額縁に入れて置きたし蜘蛛の網

外灯に特攻隊や火取虫

穂の先に揺るる白糸稲の花

一瞬の予期せぬ客や稲雀

遺影には稲のリースを飾りけり

風と暮らす   長田蒲公英

 

たんぽぽの綿毛の誘ふ旅支度

茅花流し気鬱は川のさざ波に

風死して寝つかれぬまま夜の底

風の運ぶ蚊遣りの煙子の寝息

​妖怪の足音めきて朴落葉