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第二十三回天穹賞
天穹賞
該当なし
天穹賞準賞
瓦 礫 渡辺 花穂
雷神の喝をあづかる屏風かな
菰巻くや大樹は威儀を正したり
己が息におのづと揺るる室の花
くるぶしを離れぬひかり冬すみれ
枯菊にまつはる風を括りけり
日向ぼこ絵本一冊終はるまで
合掌の手に遅れたる悴む手
大縄飛びひとかたまりの息弾む
あやとりの橋を渡れば春動く
鎮魂とも瓦礫の間にはこべらが
父母あらば今語りたや梅真白
蒼穹は神のふところ鳥帰る
人を待つ石のぬくもり入彼岸
花咲けばよろこぶふたつ二輪草
百年をいくつも重ね緑立つ
優秀賞
疫病の世 田中 国太郎
手作りのマスク自慢や通学子
咳く人の丸き背中を丸くして
ペンギンの旅する絵本春隣
梅が香を纏ひ疫病の世へ戻る
春眠の底に聞きゐる救急車
野遊びの籠に消毒液の揺れ
ふらここやどこへも行かぬ日の暮るる
金亀子抛りし指を嗅いでみる
サーファーを吐き出す波の蒼さかな
朝顔の堂堂の紺相撲部屋
入選
厳 島 星加 鷹彦
神となる途中の大樹巣立鳥
花桐や古地図のままの島の道
絢爛の平家納経お風入
浮宮の要に舞台管弦祭
風鈴の舌が客呼ぶ格子窓
島へ船島からも船梅雨あがる
人去りて潮騒残る晩夏かな
札所巡り 岩澤 秀二
初筑波大きく見ゆるところまで
初景色川は光の帯として
大榾の燃え尽きたれば日暮来る
かざす手のみな指開く焚火かな
早春や和菓子舗に季語並びけり
梨畑ラジオ聞きつつ選定す
大師講の札所巡りや犬ふぐり
寡 黙 曽我 晶子
山笑ふ逆立ちの子ら臍出して
春浅し所長が課長兼ねるらし
ピンセットでめくる古文書冴返る
縁談を携へて来る春ショール
行く春やオペラ一曲分散歩
古本を売りアネモネを買ひにけり
入り口の分からぬ画廊春暑し
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