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月刊誌「天穹」
令和七年 主宰詠
【9月号】
学びの府泰山木は花掲ぐ
「太陽の塔」夏至の千里に暮れ残る
歯切れよき句評が薬味冷奴
向日葵の百花の笑みや通学路
墓守としての帰省や山青し
【8月号】
吉野てふ回り舞台や花は葉に
緑陰に紅茶と深見けん二集
落し文源氏絵巻を蔵す寺
夏暖簾割つて海風厳島
浜昼顔灯台守の宿舎跡
【7月号】
光生む母は手品師しやぼん玉
瞑想のはずがこくりと春眠し
人の世は回り舞台よ花吹雪
身震ひのさまに羽搏き燕の子
これからと撫づる右腕菖蒲風呂
【6月号】
オールよりこぼるる光水温む
鳥交る縁切寺の裏山に
三代を立ちつぱなしや古雛
点睛は西行庵よ花の山
手をつなぐ老いの温容花の昼
【5月号】
牛の道阿蘇の焼野に棚をなす
道の辺の瑠璃の光彩犬ふぐり
春一番句座の新人大暴れ
文机の和紙に暁光春来る
明治座の列にちらほら春ショール
【4月号】
初暦表紙めくれば句友の句
吉例の古参の謡新年会
春待つや吉野の宿を予約もし
女手で立つる生計針供養
淡雪や詩語書き留むる備忘録
【3月号】
浜千鳥追ふは智恵子か九十九里
山眠る良寛さんの庵を抱き
牡蠣を剥く手際も気仙沼育ち
着ぶくれや姿の歪む鏡かと
精一杯生きゐる子らや年の酒
【2月号】
水戸殿の後楽の地や浮寝鳥
倒影のビルの窓より鳰の顔
語部へ耳傾くや石蕗の花
恵比須顔して鯛焼の腹を吹く
礼状に病の仔細冬の月
【1月号】
小鳥来る朝の一句を詠む窓辺
秋刀魚焼く煙へ帰る路地暮し
秋の雲良寛さんの筆かとも
川底に透ける甌穴紅葉川
稲刈や鎌傷残る老いの腕
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